昔々あるところに、おじいさんはいましたが、おばあさんはいませんでした。むしろ、おばあさんの代わりに僕がいました。
つまり、昔々あるところに、おじいさんと僕がいました。
おじいさんは山へ芝刈りに、僕は仕方がないので川へ洗濯に行きました。僕が川でゴシゴシと洗濯をしていると、どんぶらこ~どんぶらこ~と上流からおじいさんが流れてきたので、思いっきり無視しました。
しばらくすると、どんぶら~どんぶらこ~と今度は桃が流れてきました。僕はあわててその桃を岸に上げ、バールのようなものでこじ開けると、なんと中にはおじいさんが入っていました。
「イリュージョン!」
と、おじいさんが興奮気味に叫んだので、思いっきり無視しました。そしてまた、桃ごとおじいさんを川に戻しました。
下流のほうへ流されていく、桃とおじいさん。あっという間に見えなくなってしまいました。それを見ていて何だかとても切なくなった僕は、持っていたバールのようなものを川に投げ捨てました。
しばらくすると、川の一部がまばゆい光を放ち始めました。驚いた僕は川岸まで開脚前転をしながら近づき、その光を覗き込みました。すると、目も眩むような光の中からおじいさんが現れ、
「お前が落とした物は、金のバールのようなものか。」
「それとも、銀のバールのようなものか。」
「それとも、鉄のバールのようなものか。」
と、聞いてきたので、思いっきり無視しました。
―――
つづく。(続きません)
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